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気宇壮大な表現力で人間存在の本質を照らし出す
圓尾博一は、確固とした絵画思想と創作スタイルを確立した。自己の内的な思考と時代の現実を組み合わせて、清新な絵画性と雄弁な物語性が織り成される「庚申(カノエのサル)」シリーズを創り出す。江戸時代に盛行した「庚申信仰」に由来し、道教開祖の老子に源がある。その道徳教の第6章に「谷神死せず、それを玄牝という・・・」の漢詩があり、無限に沸き出ずる根源を女性性に例えている。その理想の桃源郷を夢見て「庚申」のタイトルがついたという。西洋流には「アルカディア」とか「シャングリア」ともいい、画家は「ブリガドーン」が気に入っている。
圓尾は該博な知識と確かな現代の眼で肥えた認識を融合し、繊細にして優美で広大な気宇をはらんだイメージ豊かな独自の世界を展開する。自己をつきつめ、常に実存と不在という概念を対置し、操作する思考から生まれる世界は、現代の類型を抜く新鮮味あふれる人間存在の本質を照らし出す。確かな存在感をもったフォルムと重層的な色彩と凝縮し密度の高い構成は、過去・現在・未来の世界を縫い合わせる如実感を示し、深遠な心理劇を見る想いがする。同時に夢ともうつつともつかない世界をあやなしている一面があり、イメージは喚起され、想像は沸き立つ。地上と宇宙に存在しているもの全てが、自分の鏡像として類同物を伴っているはずだ、などと考えさせられ、多次元宇宙の中での人間の実在性について思念の糸をたぐり寄せるのである。
(赤津 侃・美術評論家)
○ 第82回画集作品
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