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視線の欲望そそる新展開
―― 線のリズムと色彩が輝く調和宇宙
画面から次々と放たれる鮮烈な息吹によって眼が更新され、網膜に衝撃力が差し込んでくる。柴田しげるの新展開は見る醍醐味を堪能させ、視線の欲望をダイナミックに喚起してやまない。「和のかたち」を追求してきた柴田は今回、色も形もない世界から“創造物語”を始めた。絵画をめぐる思考と実践にたゆみない積み重ねの努力を傾けてきたが、今回は原点に戻り、中心からの「天地創造」の始まりという。線と色面の二元構造の基本を守り、その二元性を絵と色面それぞれにおいても同様に徹底させた。
何といっても目を奪うのは、変形150号を含む大作3点だろう。螺旋状に進展する柴田のコンセプトを一大交響楽とすれば、これらの大作は各楽章に当たり、表現が変幻されてゆく。そして、通奏音は、多様な線群と円弧が織りなすリズム感ある進退感と、有機的な生成感を促す神秘的なパッションである。創造の中心へと収斂する軌跡が見る者を広大な調和の世界へと誘う。さらに、色彩は輝き、晴朗な光をたたえている。華美に走らず、無機質なよそよそしさとは別物で、温和な光の偏在する冷徹な世界に迎え入れられたような静溢な気持ちにさせられる。視線が吸い込まれる奥深い色彩と意思と勢いのある線群の調和的な世界から空間のみずみずしい生気が浸透してくる。新しい空間性の探求の成果である。見る者は思惟と瞑想の世界へといざなわれ、量子・分子の世界から宇宙空間のリズムまで様々なイメージを喚起され、「天地創造」の物語を紡ぎ出すのである。画期的な画面の新展開と画廊空間の構成展示まで独自性を発揮した個展は見応えあるものになるだろう。
(2007年個展DMより。美術評論家 赤津 侃)
【略歴】
90年 美術文化協会展入選。新人努力賞、佳作賞、奨励賞受賞。
上野森美術館大賞展、日韓現代美術展、神奈川県展などにも出品し、美術文化協会展を主な発表の場として活動。
○ 第82回画集作品
○ 第81回画集作品
○ 第80回画集作品
○ 第76回出品作品
○ 第75回出品作品
○ 第74回出品作品
○ 第73回出品作品
○ 第72回出品作品
○ 第71回出品作品
○ 第70回出品作品
○ 第69回出品作品
○ 第68回出品作品
○ 第67回出品作品
○ 第66回出品作品