第69回展は、協会事務所を中心に各地区事務所並びに会貝諸氏の協力の下、無事終えることができた。
ここ数年来、会員の高齢化が進む中、若い作家の台頭が期待され、私も微力ながらその育成に努めてきた。
しかしこの未曾有の経済情勢の悪化の中で、若い作家達は制作活動を続けることの困難さに大きな打撃を受けている。しかしながら、こんな厳しい社会状況の中だからこそ、作家にとって制作への熱い思いや表現することへの強い意志が試されているのではなかろうか。こんな不確定な時代であるからこそ芸術を通して自己を語り、社会へ強烈なメッセージを発していくことが必要であると私は考えている。
第69回展で特に注目したのが会員の仕事である。どの作家も作品の内容や表現方法等には、常に安定しているというわけではなく、その時々に波がある。昨年の作品が良かったからといって、必ずしも今年がより向上しているとは限らない。しかし自分を信じ描き続けてきている作家は、その波は、小さいように思われる。また会員の高齢化が懸念されているが、年齢と作品内容とはあまり関係がないように思う。むしろ年齢が進むにつれ、作品がより情熱的で若々しく感じられる作家が数多く見られる。特に今年はベテラン会員に自分の世界が深く広くなってきている作品が多かったように感じた。
年齢を重ねることにより、社会を見る眼や自分の人生を見詰める眼差しがより深くなり、以前には見えなかったものが、確かな心眼で明らかに見えてくるのではないかと思う。また、他の人の作品に影響されることが少なくなり、純粋に自分の作品づくりに向かうことができるようになるのではないかとも思う。
それは、人生という限られた時間の中で、日々真剣に自分探しをし、作品に凝縮しようとしている姿であると思う。
私は常々、作家がその作品で何を表現しようとしているのかじっくり見るように心がけている。一人ひとりの作家の奥に潜んでいるものを見つけ出すことに鑑賞の視点を置いているのである。自分の好みや表現方法の違い等を比べて鑑賞することは避けなければならない。
来年は70回という区切りの展覧会を迎える。これを機に各作家がさらに新しい自分探しに邁進し、独自の世界を展開し、活気溢れる展覧会になることを期待している。
代表 浅野輝一 (2009年 8月1日)