美術文化協会は1939年、日本に「正しい美術文化の在り方を構想し具現すること」を標榜し 41名の会員で発足した。
創立当時の時代背景は少しずつ軍国主義に傾き始め、1941年遂に太平洋戦争に突入していくという正に戦時下であった。戦地に送られた多くの会員達は戦死したり、病に倒れ亡くなったり、あるいは又、行方不明になったりし、会員数が半減する程であった。
そんな劣悪極まりない厳しい社会情勢の中にあっても、自分の精神を裏切ることなく真摯に制作に向き合い続けている会員もいた。しかしその姿勢は当時の世相には受け入れられず、反戦思想家と見做され作品を没収されたり、投獄されたりする会員も出た。このような幾多の困難を乗り越え残った会員は、自己の内なる世界を信じ制作を続け、今日まで美術文化の灯を絶やさず灯し続けてきたのである。
70回展を迎えるにあたって、これまでの美術文化協会の精神を充分理解するとともに、われわれが生きている今という時代を意識しながら、一人ひとりの作家がさらなる自由な発想で自分の世界観を創りあげていくことが必要である。過去の美術文化協会を乗り越え、今日の時代に即応する美術活動を展開しなければならない。これこそが、われわれに与えられた使命であると考える。
代表 浅野輝一 (2010年 3月26日)
[ 2009年のご挨拶 ] [ 2007年のご挨拶 ] [ 2006年のご挨拶 ]