○ ご挨拶 ○


作品の根底にあるもの

浅野代表の写真

美術文化協会の作家たちは、1939年の創立以来、刻々と変わる不安定な社会情勢の中で時代と対峙しつつ、高い精神性を求め続けてきました。そしてその作家精神は今なお受け継がれてきていると言っても過言ではありません。

私たちは日々、現実社会の多様な現象に囲まれ生活しています。これらの社会状況を敏感に感じとり、現在発生している諸問題を制作の基盤に据えている作品が数多く見られることからも言えると思います。

しかしその表現方法は各々皆違います。私は各々の作家の表現方法が違うから価値があると思っています。より適切に自己表現するためには、各作家が自分の一番語り易い方法を見つけ出すことが大切です。

例えば具象的、抽象的、心象的等々の方法があることでしょう。重要なことは、単なる方法の違いではなく、自己表現したことが、どのように観る人に伝わるかでしょう。自分の想いをストレートに表現し観る人にすぐ分かる作品もあれば、反対に作家の意図していることが難解すぎてなかなか伝わってこない作品もあります。

以前ある作家が「作家は自作の7割はしっかり語らなければいけない。残りの3割は観る人の心情に任せられるような作品でなければいけない。全てをおしゃべりするものではない」と話されていました。

また別の作家は「鑑賞者を自作の入口まで誘導しなさい。それ以上のことは鑑賞者の判断に委ねなければならない」とも言っています。この二人の作家の言葉はどちらも名言だと思います。つまり冗舌すぎる作品は作家の意図することが全て分かってしまい観賞する興味が薄れてしまうということでしょう。

私たち美術文化協会の作家は、単なる造形主義的な作品造りや色彩の美しさだけを求める作品造りに走らず、深い精神性に裏うちされた他に類似性のない、しかも冗舌すぎない表現でいかに描くかに全力を注いでいきたいものです。


代表 浅野輝一 (2013年 2月20日:機関誌より)



2010年のご挨拶 ] 2009年のご挨拶 ] 2007年のご挨拶 ] 2006年のご挨拶 ]