○ ご挨拶 ○


第76回美術文化展を顧みて

浅野代表の写真

昨年、2015年5月30日から6月7日まで、協会員の念願であった「美術文化協会宇都宮展」が栃木総合文化会館(宇都宮)で開催されました。今から5年前の2011年3月、宇都宮展は準備万端整っていたものの、東日本大震災という混乱の中で開催を見送るという辛い決断を下しました。しかしこの時、全会員が「いつか必ず宇都宮で展覧会を!」という熱い思いに燃えていました。昨年、その思いをやっと実現できたのです。その裏には、阿久津会員を中心に栃木県の所属員の皆さんが労力を惜しまず奔走して下さり、その熱意が通じ総合文化会館の小池館長をはじめ、報道関係の方々、地域の方々の強い協力や支援を得て開催されることになったのです。この宇都宮展は、協会の長い歴史の中でも特質的な展覧会になりました。大震災からの復興を支援する大きなメッセージであると同時に、作家ひとり一人が自己の原点を深く掘り下げ作品に向き合うという貴重な体験ともなりました。私は大きな胸のつかえがとれた思いでいっぱいでした。

2016年、伊藤本会事務所の始動で第76回展の準備を進めていた4月14日、熊本地方に震度7の大地震のニュースが飛び込んできました。テレビに映し出される光景は、目を疑うばかりの酷いものでした。何よりも熊本地区の所属作家の安否が心配で伊藤事務所と連絡をとり合い、各作家に電話やメールを入れました。とりあえず生命に関わる大きな事故はなく安心しましたが、被害の状況は並大抵なものではありませんでした。屋根瓦が落下し半壊判定を受けた方、家に住めず一時車中泊で生活された方、アトリエが半壊された方、準備して倉庫に保管していた作品が破損し今回は出品できないと申し出られた方等々、少しずつその被害の大きさが伝わってきました。その後、4月18日から開催される予定だった熊本支部展も美術館が被災し、中止となったとの連絡が入ってきました。奇しくも5年前の宇都宮展の中止と重なり、熊本支部所属員の気持ちを考えると、私は胸が引き裂かれる思いで失意のどん底に突き落とされました。しかし、大きな余震が続き不安な日々を送られている熊本の会員から、芸術家としての熱い思いが伝えられてきました。アトリエが使用できず玄関脇の狭いスペースで出品作品の仕上げをされた方、第76回展に出品する作家のアトリエを回り、作品搬入の手伝いをされた方、支部員と連絡をとり合い現状をまとめて報告してくれた方等、ご自身が大変な状況にありながら展覧会のことを考え行動されていることに私は逆に勇気を貰い、第76回展を何としても成功させなくてはならないと強く思いました。この震災を通して、作家が制作する意志や作品の裏側にある魂がどこから沸き起こるのだろうか等々をあらためて考えさせられました。協会の創立精神である「内なる自己」の意昧を今一度問い直すことの重要さを痛感させられました。

第76回展を観て下さった評論家の赤津 侃氏は、「美術文化展の作品は、1室から13室まで見応えのある作品が多い。やはり筋の通った作家集団であるからでしょうね。」と話してくれました。やはり評論家である中野 中氏は、「今年も美術文化の作品は、どの部屋もおもしろい。観ていて楽しい。しかし見応えがあって疲れるね。」とコメントしてくれました。

以前から述べているのですが、「美術文化協会の作家集団は、今こそ自己を深く掘り下げ、時代を見つめる確かな眼を持ち描き続けなければならない。」と、私はますます強く実感させられました。


代表 浅野輝一 (2016年10月:機関誌より)



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